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  • 2007.07.28 Saturday
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業界こぼれ話 ラジオでとっさにホラを吹く?


冬には「あつかん」が合う・・・

制作・演出 松本こうどう

アメリカ在住の頃、ときどき地元のテレビやラジオ番組のゲストとして出演していた。

ゲストと言っても、私が日本人ということだけで専門外のことでも呼ばれることが多かった。そのひとつにラジオ番組での日本食の解説やコメントというのがあった。ラジオにゲスト出演してラジオ局のパーソナリティ(ラジオ番組のアナウンサー)と他のゲスト相手に日本食に関して対談するのである。

私は公共放送でコメントを語れるほど日本食に詳しくはない。だが、当時ブームとなっていた日本食でアメリカ人が聞きたい事とは、寿司や天ぷら、すき焼きなどについて日本人なら誰でもわかるような事であったから私にもできた。

例えば、こんな感じである。パーソナリティにすき焼きの具には何を入れるか聞かれる。それに対して、「紙のように薄くスライスした神戸ビーフや長ネギの白い部分などを入れる」ともっともらしく答える。(糸こんにゃくなど、彼らが見たことがないものなどは、それは何であるかなど、すき焼きから離れた面倒な話に発展するから言わない)するとパーソナリティから「私はブロッコリーやニンジンを入れるのが好き」と返ってくる。

日本ではそんなの普通は入れないと答える。言った瞬間、ニンジンは入れることもあるような気がする。だが、まぁいいやとほっておく。すると、すき焼きにブロッコリーはおいしいのに何故入れないのかと質問してくる。ここで、「それはすき焼きにおける日本の食文化、習慣だから」などとは答えない。ここでヘタにそう言うと日本の食文化に関して説明しなくてはならなくなる。(そんな知識はないから出来ない)

こういう場合は、「例えば、サンドイッチにポテトサラダは入れないでしょう、それと同じです」と答える。(アメリカには何故かポテトサラダサンドイッチというのがない) そう答えると必ず、他のゲストであるフード雑誌の編集者みたいのが「食文化というものはそういうものである」みたいなコメントで、「それは食文化、習慣だから、わが国にも似たところがある」と発言してくるから、私が日本の食文化に関して説明する必要がなくなる。

また、寿司の話になると決まってワカメなどの海藻類や海苔が話題となる。アメリカでは一般的にこれらをSeaweedと呼ぶ。アメリカ人にとってWeedは雑草であり、Seaweedもやはり海の中でゆらゆらしている雑草を連想させる。だから、食品となっている海藻類や海苔がわからない。私も海藻類や海苔など詳しく説明できない。

こういう時は、日本人もSeaweedは食べないと答える。あの食べているのはSea Spinach(海のほうれん草)であると答える。(実際には、海のほうれん草なんてものはない。Sea Spinachは私が作った造語である)すると、なるほどという顔をして納得する。余談ではあるが、アメリカの寿司屋でSeaweedと呼ばれている海藻類や海苔を、食わず嫌いのアメリカ人にSea Spinach(海のほうれん草)であると説明してみる。すると、アメリカ人も食べてみて好きになる場合が多い。こういう「方便」は良い。

ある時、地元のタレントやニュースキャスターと一緒にラジオでワインや日本酒を試飲する番組があった。アメリカ人にとって日本酒はワインみたいな感じであるが、「あつかん」は珍しい。Hot Sakeであるが、Hot Wineというのがないから熱い酒はなじみがない。

そこで私が番組に呼ばれて「あつかん」の作り方から説明することになった。「あつかん」は酒を「とっくり」に入れて湯で温めるのが普通と思うが、アメリカ人は「とっくり」を持っていない。ではどうするか。紅茶でも同じだが、アメリカ人は酒を適当なカップに入れて電子レンジでチンして温める。簡単である。

ラジオ番組では電子レンジではない「あつかん」で出演者が試飲することになり、私がその「あつかん」を用意することになった。しかし、アメリカに住んでいる私も「とっくり」を持っていない。そこで考えた。

日本食料品店からワンカップ大関を買ってきて、それをそのまま水をはった鍋にいれて火にかけてみた。鍋の水が沸騰してしばらくしてワンカップ大関を出してみると見事に「あつかん」になっていた。わずかにワンカップ大関のフタが内側から外に膨らんでいたが大丈夫であった。

本番収録はワインの種類が多い地元で有名なレストランで行なわれることになっていた。この店は日本レストランではないから、数日前に何本ものワンカップ大関を持ち込み、同じ方法で「あつかん」にしておくように店の人に頼んでおいた。

さて、収録の当日。まずは店のソムリエが数々のワインを紹介する。それをゲストたちが試飲しながらコメントする。そして、「あつかん」の登場となった。パーソナリティが「あつかん」を説明する。そして今日は電子レンジではなくて湯に入れて温めたHot sakeであると解説する。

私が数日前に持ち込んだワンカップ大関の「あつかん」が運ばれてきた。湯から出したワンカップ大関のフタがかなり内側から外に膨らんでいた。どうやら、数日間「煮こんだ」ようである。でもフタは壊れていない。それらを確認している私の横でパーソナリティが「酒はワインと違って赤はなく白しかない。それも水のように透きとおった白である」とマイクに向かって説明している。皆の前にワンカップ大関の「あつかん」を置く。

そのときである。ゲストの一人が「このHot Sakeは水のように透きとおってなく、白ワインのように少し黄色い」と言い出した。そんなことはない。ワンカップ大関は透明の酒のはずである。横においてあるCold Sake用のワンカップ大関はちゃんと透明である。ワンカップ大関の「あつかん」を持って太陽の光に当ててみる。確かにアメ色のように少し黄色い。、数日間「煮こんだ」ために変色したようである。

これはマズい。いくらなんでもやり方が悪くて変色したとは言えまい。どうしようかと焦った。そこにパーソナリティが、どうしてこのHot SakeはCold Sakeとは色が違うのか聞いてきた。「Yes・・・」と言いながらワンカップ大関の「あつかん」に目をやる私。

ワンカップ大関の「あつかん」は金色とも言える見事なアメ色をしている。その時、とっさに口から「これはPremium Goldの酒です」というセリフが出た。「プレミアムゴールド」の一言でその場が盛り上がった。ゲストのニュースキャスターが、「日本ではスシシェフ(寿司職人のこと)だけが飲める特別な酒がある、と聞いた事があるがそれがこれか?」と聞いてくる。「そうだ」と答える私。こういうのは「方便」とは言わない。とっさの「ホラ」と言う。

すると、パーソナリティがヨーロッパのレストランのシェフにもそういう特別なワインはあるのかと他のゲストに聞く。話はそっちの方で盛り上がる。「あつかん」を試飲しながら、Hot Wineはうまいだろうかと盛り上がる。幸い、「プレミアムゴールド」についてそれ以上に聞かれなかった。味がヘンだと思ったゲストも一人もいなかった。

最後にパーソナリティが、テレビでなくラジオなのできれいな色の「プレミアムゴールド」をリスナーの皆さんにお見せできなくて残念ですとコメントした。

テレビでなかったから、酒の変色はバレていない。ラジオではラベルが映らないから「プレミアムゴールド」がワンカップ大関であったとバレていない。

こちらにしてみれば、テレビでなくてラジオだったから助かった。今だから話せるが、これはマズかったとわかっている。

コピーライト2006 松本こうどう

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  • 2007.07.28 Saturday
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