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  • 2007.07.28 Saturday
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業界こぼれ話 「きつね」と「たぬき」はややこしい


これは「きつねそば」か、それとも「たぬき」か・・・

制作・演出 松本こうどう

番組収録前にロケハンと言って撮影候補地を下見する。

そんなときに何気なく入った昼メシの店がおもしろく、あとで番組取材を入れたという事もある。そんな取材中の昼時に入った大阪のうどん屋で、私は忘れられない体験をした。

関東では「うどん」や「そば」を出す店を「そば屋」というが、関西では「うどん屋」と言う。ここからして関東と関西では「うどん」や「そば」の文化が違う。東京人は東京の「そば屋」には「うどん」もあると知っているが、関西に行って「うどん屋」と聞くと「そば」はないのかと思う。東京で「うどん屋」と言うと「うどん」専門店のことだからである。

関東と関西での「そば屋」と「うどん屋」は、呼び方の違いだけと理解できるが、次に述べる「きつね」と「たぬき」のことは、私は全く考えもつかなかった。

関東では「きつね」というのは「油揚げ」が上にのっているものを言う。そして「たぬき」というのは「あげ玉」が上にのっているものを言う。従って「きつね」も「たぬき」も「そば」の場合と「うどん」の場合がある。「きつねそば」や「たぬきうどん」と言ったものである。

しかし、関西では「きつね」は「油揚げ」が上にのった「うどん」のことを言い、そして「たぬき」は「油揚げ」が上にのった「そば」のことを言うのだそうだ。(「きつね」と「たぬき」の関係において、「油揚げ」だけが登場し「あげ玉」は出てこない) 「きつね」は常に「うどん」であり、「たぬき」は常に「そば」である。従って「きつねそば」や「たぬきうどん」はあり得ない。

関東と関西では、「きつね」と「たぬき」は同じ名称でありながら、意味だけでなく意味合いのコンセプトがまるで違う。私は関西でのこの「きつね」と「たぬき」の意味を知らなかった。

ちなみにこのことを知った後に、では「あげ玉」がのった「うどん」や「そば」は関西では何と言うのか大阪の人に聞いた。東京で言う「たぬきうどん」と「たぬきそば」である。大阪では「あげ玉」は店のカウンターにおいてあってタダで「うどん」や「そば」にかけるものだから、そういうものには特に名称がないと言われた。なるほど、七味をかけた「うどん」や「そば」には名称がないのと同じである。

さて大阪のある暑い日に、私は取材の合間の昼メシを食べる店を探していた。ある「うどん屋」の店先に「油揚げがのったうどん」に茶碗のご飯がついている本日の日替わりランチ定食の見本が置いてあった。要は「きつねうどん」とご飯の定食である。これも関西風である。関東では「うどん」をおかずにご飯を食べる風習はない。(多分であるが)

急いでいた私はコレに決めて店内に入った。店内には割ぽう着を着た小太りの愛想の良いおばちゃんがいた。私はここで生涯忘れられない体験をすることになる。その体験とは、このおばちゃんとテーブルについた私との会話であった。それはまさしく「きつね」と「たぬき」の化かし合いのような会話であった。以下にその様子をドキュメンタリータッチで再現する。関東と関西の「食の名称文化」の違いを浮き彫りにした貴重な会話の記録である。

おばちゃん:
何にしますぅ?

私:
外にある日替わりランチ。(店頭の「きつねうどん」を頭に思い浮かべる私)

おばちゃん:
あいよ。

私:
でも「きつね」じゃなくて「たぬき」に変えてもらえる?(私は「油揚げ」より「あげ玉」の方が好きなので頼んでみた)

おばちゃん:
いいんやけど、もう「そば」ないで。今日全部出ちゃったわ。(私は「あげ玉」がのっていれば「そば」でなくても「うどん」でも良いが、「そば」に変えろと言ったわけでもないのにヘンな事言うなと思う)

私:
「うどん」でいいよ。

おばちゃん:
ほな、「きつね」な。

私:
いや、「たぬき」がいい。(私は「うどん」に「あげ玉」がのった「たぬきうどん」を意味していた)

おばちゃん:
だから、「そば」もうないって。

私:
うん、だから「うどん」でいいって。

おばちゃん:
ほな、「きつね」やろ。

私:
いやいや、「たぬき」がいいんだけど。

おばちゃん:
だから、「そば」ないって言っとるやん。

私:
だから「うどん」でええって言っとるやん。(なぜか、私も大阪弁になる)

おばちゃん:
ほなら、「きつね」でええんやな。

私:
「きつね」じゃなくて「たぬき」がええんや。「うどん」でええから。「たぬきうどん」や。

おばちゃん:
アンタ言っとんの、それ「きつね」やんか。

私:
違う。誰も「きつね」なんて言っとらへん。「たぬき」や言うとるやん。「油揚げ」じゃなくて「あげ玉」がええんや。「うどん」でええから。(なぜか、ずっと大阪弁の私)

おばちゃん:
(ちょっと間をおいて)・・・「うどん」に「あげ玉」がのったんでええんかい?

私:
そや。それや。

おばちゃん:
そなら、最初からそう言いはったらええのに。

私:
・・・(状況がわからなくなっていた)

おばちゃん:
(カウンター越しに厨房に向かって)日替わりの「きつね」に「あげ玉」ものせたって。

私:
・・・(状況はわからないが、「あげ玉」がのってくるならいいかと思う私)

やはり出てきた「たぬき」というか、そうではなく「きつね」には「油揚げ」と一緒に「あげ玉」がのっていた。

状況はご理解頂けたであろうか。はっきり言って、おばちゃんも私も正しい。そしておばちゃんにとっても私にとっても、まさに「きつねにつままれる」感じの「きつね」談議であった。

コピーライト2006 松本こうどう

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